4 HERO

  • イギリスのドラムン・ベースのデュオ。このジャンルでは代表的なアーティスト。
  • 「パラレス・ユニヴァース」で世界的に知られるようになった。

1
IN ROUGH TERRITORY

1991年。

2
PARALLEL UNIVERSE

1994年。4ヒーローはイギリスのアフリカ系2人組。テクノ、あるいはダンス音楽の世界でドラムン・ベースが知られるきっかけになったアルバム。このアルバムとゴールディーの「タイムレス」がドラムン・ベースの古典的作品として知られる。ドラムン・ベースとはおおむね160から180拍の(かなり速い)リズムで作曲されるエレクトロ音楽で、ジャングルと似たサウンドを持つ。ジャングルよりも幻想的で雰囲気が冷たい。ベースの音は通常の音楽よりもかなり低い。オープニング曲の「ユニヴァーサル・ラブ」は女声ボーカルが入り、それ以外は基本的にインスト。

3
TWO PAGES

1998年。発売当初は2枚組で、1枚目は71分、2枚目は47分。現在では曲を再構成した1枚のCDで販売されている。1枚目はボーカルが入り、ストリングスやバンド・サウンドで構成される。2枚目は「パラレル・ユニヴァース」のようなドラムン・ベースで、ボーカルはほとんどない。1枚目から聞けば、これがテクノ、ハウスの一ジャンルとは思われないだろう。サウンドの大きな転換だ。ストリングスやホーン・セクションはアフリカ系アーティストのイメージではなく、どちらかと言えば白人が作りそうなサウンドだ。これを「美しい」と感じる感性は、クラシック風サウンドに何となく安心を感じる感性と同じであり、これまでに自分の中で培われた(西洋的)イメージに影響されているのだろう。アフリカ系アーティストの中にもそうした感性の人がいてもおかしくないし、実際、70年代にはフィラデルフィア・ソウルのサウンドを作ってきたMFSBがあった。白人、あるいはクラシック音楽に比較的なじみがある(日本人のような)人は、MFSBの流麗なストリングス・サウンドに感動するのと同じ感覚を、このアルバムにも見出していると言える。アフリカ系の人が聞いても白人と同じように「名盤」と感じるのか、ヒスパニック・ラテン系が聞いても同様なのか興味がわくが、そうした興味を起こさせること自体が名盤である証拠だ。

 
TWO PAGES

1998年。2枚組を1枚にまとめたCD。77分。半数近くの曲にボーカルが入り、ストリングスやドラム、ベースが楽器で演奏される。ストリングスが入ったジャズ・ロック「グレイ」ではテンポが落ち、それに続く「アクション」では男声ラップが挿入される。

 
TWO PAGES REINTERPRETATIONS

1999年。

4
CREATING PATTERNS

2001年。制作にかかわった2人の個性が曲ごとに顕著だ。マーク・マックはストリングスが多く、ディーゴの曲はリズムやビートの構築に主眼を置き、パーカッションを多く使う。ストリングスは少ない。2人が協同して曲を作ることはほとんどないらしく、連名で制作されている曲はない。バンド編成で演奏するのがほとんどで、ボーカルも多数の曲に入っているので都市音楽的なジャズ、フュージョンとして聞ける。このアルバムがドラムン・ベースかと言われれば、違うということになるだろう。ディーゴがかかわった曲の一部がそう呼べるだけだ。「12トライブス」は東洋風のサウンド。「レ・フラー」はミニー・リパートンのカバー。ストリングス、ホーン・セクション、コーラスが入り、70年代ソウルそのものだ。

 
THE REMIX ALBUM

2004年。

5
PLAY WITH THE CHANGES

2007年。前作の路線。6曲目まではマーク・マックとディーゴの曲が交互に収録されているので、1曲ごとにサウンドが大きく変わるのが分かる。4ヒーローはマーク・マックとディーゴが互いに自分の曲を持ち寄る名目上のグループと化しており、このアルバムが70年代後半にアメリカで出ていればソウルとして聞かれていただろう。イギリスで出ていれば女性ボーカルが入るジャズ・ロックとして聞かれたかもしれない。「スーパーウーマン」はスティービー・ワンダーのカバー。