BATTLES/TYONDAI BRAXTON

バトルズはアメリカのポストロック・グループ。ギター3人とドラムの4人編成。ギターの3人はキーボード、エレクトロニクス、ベース、ボーカルを随時兼任する。2011年現在、ギター2人、ドラムの3人編成。

 
EP C/B EP

2006年。3枚のEP盤を2枚組にした日本盤。2枚とも6曲で33分台。ギター、キーボードとも短く区切った音を互いに演奏し、タイミングやアンサンブルのよさで3人がメロディーを構築していく。曲のタイトルは単語ではなく識別記号のようなもので、意味からの解放を試行した感がある。最長の「BTTLS」は12分半で、即興の電子音楽。

1
MIRRORED

2007年。ボーカルを楽器として扱い、加工もする。ボーカルというよりも楽器の等価値としての声となっている。サンプリングを多用した緊張感のある演奏と、「アトラス」のようなポップさを両立するのは難しい。音符の数が多いのはギターやサンプリングをパーカッションのように連打することが多いから。「レース:イン」はイエス、「アトラス」はスージー・クアトロの「悪魔とドライブ」、「レインボウ」は70年代中期のキング・クリムゾンを思わせる。

 
ICE CREAM

2011年。シングル盤。ギターのタイヨンダイ・ブラクストンが抜け3人編成。キーボードを主体としたポップな曲。ボーカルも付く。

2
GLOSS DROP

2011年。ギターが1人抜けたことで、技巧的なアンサンブルがやや難しくなり、メロディー楽器がフレーズを弾くことが多くなった。音と音の組み合わせからフレーズとフレーズの組み合わせ、あるいは重なり合いに移動している。耳でメロディーを追いやすくなったので、前作からさらに聞きやすくなった。12曲のうちボーカルがあるのは4曲。「マイ・マシーンズ」はゲイリー・ニューマンがボーカルを取る。

3
LA DI DA DI

2015年。全曲がインスト曲となった。「ミラード」に比べると前衛性はやや薄れ、アンサンブルを重視するようになっている。キーボードの量も多くなった。ギターを含めた不協和音が減り、それに伴って緊張感も薄れている。

4
JUICE B CRYPTS

2019年。ベース兼ギターが抜け2人編成。ギター兼キーボードとドラムだけになり、10曲のうち5曲はゲストでボーカルを招いている。メンバーが2人になったことで仕事量が過大になり、専任のプロデューサーも招いて負担を減らした。プロデューサーがいるからといって方向性が大きく変わったわけではない。2人になるともはやバンドのアンサンブルが成り立つわけがなく、アルバムとライブは別の表現形態として聞くべきだろう。ボーカルは声ではなくボーカルとして扱われており、ボーカルとバンド編成という体だ。イエスのジョン・アンダーソンは有名。ボーカルがない曲は従来の雰囲気の曲が主体。

 
HISTORY THAT HAS NO EFFECT/TYONDAI BRAXTON

2002年。バトルズのギター、キーボード奏者タイヨンダイ・ブラクストンのソロアルバム。ほとんどがギターだけによる演奏で、曲によってベース、エレクトロニクスが加わる。前衛的な演奏。特に前半はエレキギターによる音響作品が中心で実験性が高い。10(9)曲のうち歌詞があるのは4曲。日本盤は2005年発売。

 
CENTRAL MARKET/TYONDAI BRAXTON

2009年。前作よりもはるかに聞きやすい。オーケストラ、ドラムを使い、映画音楽や劇付随音楽のようにメロディアスだ。タイヨンダイ・ブラクストンはギター、ベース、キーボード、編曲をやり、ドラムとオーケストラは別のアーティストが参加している。前半はインスト曲、後半はボーカルも入る。チャイコフスキーよりはストラヴィンスキーに近い編曲だ。

ORANGED OUT E.P/TYONDAI BRAXTON

2016年。EP盤。5曲収録。実験的な曲を収録したのだろうが、手法がある程度推測できる電子音が中心となっており、驚きは少ない。