BULLET FOR MY VALENTINE

ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインはエモ、スクリーモを取り入れたハードなロックバンド。メタルコアの代表的バンドとされる。イギリス、ウェールズ出身。ハードなサウンドを提示するロックとしては、通常のボーカルと絶叫型のボーカルが同時に在籍し、演奏はヘビーメタルに近いところが他と異なる。アルバム発表前のシングル盤で注目された。

 
BULLET FOR MY VALENTINE

2004年。シングル盤。ボーカル兼ギター2人の4人編成。フューネラル・フォー・ア・フレンドよりもさらにヘビーメタル寄り。ボーカル兼ギターの2人が通常のボーカルで歌い、ベースが絶叫型ボーカルで歌う。ソイルワークやアーク・エネミーが出てきたときと同様、バックの演奏はヘビーメタルで、ボーカルだけが異なるジャンルの形態を持っている。ヘビーメタルの定義を再考させると同時に、ヘビーメタルの表現の幅を拡張させるバンドのひとつ。

 
BULLET FOR MY VALENTINE

2005年。シングル盤。「ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン」に「4ワーズ(トゥ・チョーク・アポン)」を加えた日本盤。

1
THE POISON

2005年。シングル盤の路線を踏襲。バックの演奏がヘビーメタルであるスクリーモと言える。ボーカルの歌唱力が上がれば同系統のバンドから一歩抜け出せるのではないか。通常のボーカルと絶叫型ボーカルが両方いるバンドは、通常のボーカルが一本調子であることが多く、ボーカルで差がつかないことが多い。このバンドが他のバンドと差別化できる点はヘビーメタルに近いサウンドであってボーカルではない。

2
SCREAM AIM FIRE

2008年。前作と同じ路線の曲も含まれるが、2人のボーカルが通常の歌い方で、2声のコーラスまでとる曲が複数ある。「ハーツ・パースト・イントゥ・ファイア」「ディスアピア」「フォーエヴァー・アンド・オールウェイズ」は曲調が明るめで、サウンドの転換を強く印象づけている。この3曲はデス声が出てこないので、変化が余計に強調される。ヘビーメタルに近いサウンドでデビューしたことがよかったのか、まずかったのかはこれからの活躍次第で決まるだろう。

3
FEVER

2010年。切れのよい小刻みなギター、メロディアスで抑揚の大きいボーカルがロックの高揚感を大きく盛り上げる。ネット配信や音楽の携帯が広まっているので、アルバムをアルバムとして制作する意識が薄れているのかもしれないが、バラードやミドルテンポの曲がない。音楽的な幅は狭いが、逆にいえばどこから聞いてもブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインの音となっている。ボーカルはスクリーモと変わらない。日本盤ボーナストラックの「ラスト・ファイト(アコースティック・バージョン)」はピアノとストリングス系キーボードでの演奏、「ロード・トゥ・ノウウェア」はアコースティック・ギターを使用、あとの2曲はロック。

4
TEMPER TEMPER

2013年。ヘビーメタルに近いサウンドで、ボーカルが若い声で歌い、スクリーモのような歌い方は減っている。サウンドはシンプルで、音の厚みを加えるような編集はされていない。ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインとしてはスクリーモを使わずに親しみやすいヘビーメタルを目指したのかもしれないが、牙の無くなった猛獣のようなイメージとなっている。曲だけで勝負するには早すぎたか。

5
VENOM

2015年。ベースが交代。ベースはボーカル兼ギターが演奏している。オープニングの「ファイヴ」は1分半のイントロで、実質的に「ノー・ウェイ・アウト」から始まる。全体にメロディアスなメタルコア、情緒的なメタルコア、あるいは絶叫のやや少ないスクリーモと言えるサウンド。デビューしたころのサウンドに近く、メロディーは覚えやすくなっている。ボーカルの絶叫があっても威圧感は少ない。ライブで客が歌うことを想定したような「ユー・ウォント・ア・バトル?(ヒアーズ・ア・ウォー)」と、薄くエレクトロニクスが入ったアルバムタイトル曲が新しい要素となっている。メタルコアの代表的バンドという評価はまだ維持できている。

6
GRAVITY

2018年。ドラムが交代。「テンパー・テンパー」「ヴェノム」の路線を押し進め、シンセサイザーを使うメロディアスなロックとなっている。ギターを中心とするヘビーロックの曲調で、豪快さはヘビーメタル風のギターが担っている。アモルフィスを若くしたようなサウンドと言ってもよい。シンセサイザーやサンプリング、エレクトロニクスの導入の仕方はもっと大胆でもよかったのではないか。2010年代後半にもなってメタルコアをやることを時代錯誤と感じるのは十分理解できる。