CATHEDRAL

  • イギリスのヘビーメタルバンド。4人編成。ボーカルのリー・ドリアンとギターのギャズ・ジェニングスを中心とする。
  • デビュー時は陰鬱、暗鬱なヘビーメタルだったが、すぐにメロディーとリズムを増やし、ブラック・サバスのようなサウンドになった。

1
FOREST OF EQUILIBRIUM

1991年。邦題「この森の静寂の中で」。イギリスのハードコア・バンド、ナパーム・デスのボーカル、リー・ドリアンが結成したバンド。ギター2人の5人編成。7曲のうち7分台が2曲、9分台が2曲、オープニング曲は11分。ハードコアとは対極にあるような沈み込む曲調。フルートやアコースティックギターも使い、引きずるようなギターでドローン効果を出している。日本盤は「ドゥーム・メタル」の誕生を宣言している。ジャケットはヒエロニムス・ボスの「快楽の園」を思わせる。

2
THE ETHEREAL MIRROR

1993年。邦題「デカダンス」。一般的なロックのメロディーやリズムを入れた聞きやすいサウンド。「ライド」「ミッドナイト・マウンテン」はポップなメロディーだ。「ファンタスマゴリア」はカーヴド・エアを意識したタイトルと思われ、「LSDを使用した」アドリブと表記されている。この曲以外は4分から7分になり、自己満足の世界から他者を想定したサウンドとなった。

 
STATIC MAGIK

1994年。「ミッドナイト・マウンテン」と、新曲3曲、EP収録曲3曲、日本公演のライブ2曲の9曲。日本盤は71分のミニアルバムとして出されている。「ザ・ヴォヤージ・オブ・ザ・ホームレス・サピエン」は22分半。

3
THE CARNIVAL BIZARRE

1995年。70年代のブラック・サバスに似せたギターの厚み。メロディーも似ている。1世代を経て、ブラック・サバスがロックのスタンダードになったことを証明している。アメリカでも同様のサウンドがあるが、麻薬による酩酊とともに語られている。クラシックのようなストリングスを入れたときにも、ヨーロッパのバンドはクラシック、アメリカは麻薬の高揚感に結びつけられるため、アメリカとイギリスで同時に発生しているサウンドは同一の流れかもしれない。「ユートピアン・ブラスター」はブラック・サバスのギター、トニー・アイオミが参加している。

 
HOPKINS WITCHFINDER GENERAL

1996年。邦題「ホプキンス」。EP盤。6曲収録。「ホプキンス」は台詞のイントロがついている。「ファイア」はクレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンのカバー。「ユー・ノウ」はカーヴド・エアのカバー。「ザ・デヴィルズ・サミット」はサックスが入る。

4
SUPERNATURAL BIRTH MACHINE

1996年。ブラック・サバスのギターの音を利用して、別のアーティストの曲を演奏しているサウンド。安定してきたので予定調和的に進行することが逆に驚きを小さくしている。多くのロックバンドが通過する評価を、カテドラルも受ける時期になっている。傾倒するアーティストが明確だと、呪縛から逃れるのは大変だ。

5
CARAVAN BEYOND REDEMPTION

1999年。オープニング曲の「ヴードゥー・ファイア」は途中でブードゥー・ドラムが出てくる。日本盤は箱入りで、ジャケットとバンドロゴが異なっている。欧米ではブラック・サバスに関連づけられることを避けたようなロゴとなっている。アメリカを意識しているならば、このギターの厚さはマウンテンやグランド・ファンク・レイルロードになるだろう。カウベルを使う曲はマウンテンの「ミシシッピ・クイーン」を思わせる。

 
IN MEMORIAM

2000年。デビュー前のデモテープ収録曲4曲に、ライブ5曲を加えた企画盤。デモテープは1990年、ライブは1991年録音。ギター2人の5人編成。曲調はドゥーム。音質はよくない。

6
ENDTYME

2001年。「この森の静寂の中で」以来のドゥーム路線。ギターとボーカルの音が変わり、「デカダンス」以降では曲のテンポが最も遅い。「デカダンス」によってサウンドの基本路線を確立したが、それ以前のアルバムが存在したおかげで戻れる場所が確保できている。地にまとわりつくようなギター、ベース、濁ったボーカルが多くの部分を占めている。

7
THE VIITH COMING

2002年。邦題「セヴンス・カミング」。雰囲気は「キャラバン・ビヨンド・レディンプション」以前に戻った。ボーカルはリー・ドリアン特有の節回しが少なくなり、メロディーをたどる歌い方になっている。キーボードはオルガンがよく使われる。「エンドタイム」がなければこれらの変化は分かりにくかっただろう。「コングレゲイション・オブ・ソーサラーズ」は「デカダンス」路線の曲調。

THE SERPENT'S GOLD

2004年。ベスト盤。

8
THE GARDEN OF UNEARTHLY DELIGHTS

2005年。9曲のうち2曲は1分台のインスト曲、5曲は4、5分、最後の「ザ・ガーデン」は8部構成で27分。8曲目まではヘビーメタルだが、必ずしもブラック・サバスのようなサウンドではない。「ザ・ガーデン」は女性ボーカルやバイオリン、語りを含む。このアルバムを聞いて直接的にブラック・サバスを思い浮かべることは少ない。

9
THE GUESSING GAME 

2010年。2枚組で13曲、85分。メロトロン、オルガン、女性ボーカルを使うのは前作と同じだが、メロトロンとオルガンがギターと対等のメロディー楽器として活躍している。3曲はインスト曲。70年代のブラック・サバスとプログレッシブ・ロック系ブリティッシュ・ロックを別のボーカルで聞いているようなサウンド。最後の「カテドラルの旅」は蛇足で、削除して1枚に収録してもよかった。

10
THE LAST SPIRE

2013年。邦題「ザ・ラスト・スパイアー 終焉」。解散することを発表し、このアルバムが最後となる。ミドルテンポよりさらにゆっくりしたテンポが多く、バンドのイメージ通りのサウンドになっている。ブラック・サバスの「ブラック・サバス」と同様、オープニング曲の「棺桶守」は長いイントロ「地獄へようこそ」がつく。「監視眼」はハモンドオルガン、ムーグ、メロトロンを使う。ストーナー・ロックに近いサウンドを持つヘビーロックとして聞く人が多く、ブラック・サバスのような宗教的陰影を帯びたサウンドを目指すバンド側が股裂きに遭ってしまったと言える。