ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA/ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA PART TWO

エレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)はイギリスのロックバンド。初期は複数の弦楽器奏者をバンドに内包していた。中心人物はボーカル兼ギターのジェフ・リンと、ロイ・ウッド。ロイ・ウッドは早々に離脱する。弦楽器、管楽器を駆使したクラシック調のサウンドでありながら、メロディーはビートルズに近かった。80年前後になるとキーボードの使用が多くなり、バンドの編成も小さくなっていく。80年代中頃に活動を停止。代表作は「エルドラド」「オーロラの救世主」「アウト・オブ・ザ・ブルー」「ディスカバリー」。代表曲は「10538序曲」「イーヴィル・ウーマン」「オーロラの救世主」「テレフォン・ライン」「ドント・ブリング・ミー・ダウン」「トワイライト」ほか。

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NO ANSWER

1971年。邦題「踊るヴァイオリン群とエレクトロニック・ロックそしてボーカルは何処に」。ザ・ムーヴの中心人物だったジェフ・リン、ロイ・ウッドのマルチ・プレーヤー2人とドラム、バイオリン、フレンチ・ホルンの5人が正式メンバー。ロイ・ウッドはボーカル、チェロ、オーボエ、クラリネット、ベース、アコースティック・ギターをやっている。終始チェロとバイオリンの弦楽器がバックで響いている。ビートルズがプログレッシブ・ロックをやっているような感じ。「10538序曲」収録。

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ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA II

1973年。チェロ奏者3人、ベース兼キーボード、バイオリンの5人が加入し、ロイ・ウッドとチェロの1人、フレンチ・ホルン、バイオリン奏者は脱退。6人編成となり、このうち3人が弦楽器奏者になった。初期の代表曲「ロール・オーバー・ベートーベン」収録。

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ON THE THIRD DAY

1973年。邦題「第三世界の曙」。新たにバイオリン奏者が加入、7人編成。弦楽器による室内楽に重点を置いたかのような曲が多い。「山の大王の広間にて」はグリーグの「ペール・ギュント」のなかの曲をカバー。「母なる大海の裂けし時~宇宙の帝王」といった大仰な邦題が各曲についている。「ショーダウン」「いとしのベル」収録。

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ELDORADO

1974年。オーケストラ・パートをセッション・オーケストラに任せることになったため、バックの演奏が華麗になった。特に「エルドラド・序曲」から始まり「プアー・ボーイ」で終わるA面の流れは素晴らしい。「見果てぬ想い」「ボーイ・ブルーの帰還」収録。コーラスも混声合唱が使われているようだ。個人的に傑作。全米16位。

5
FACE THE MUSIC

1975年。前作と同路線。冒頭の「ファイア・オン・ハイ」は混声合唱によるタイトルの詠唱のみでインストに近い。「ポーカー」はかなりハードな曲。「イーブル・ウーマン」「ストレンジ・マジック(不思議な魔術)」収録。全米8位。

 
OLE ELO

1976年。上記5枚からのベスト。

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A NEW WORLD RECORD

1976年。邦題「オーロラの救世主」。このアルバムから宇宙船が登場。バンドのシンボルとなった。「ドゥー・ヤ」はムーヴ時代の曲。「テレフォン・ライン」収録。「哀愁のロッカリア」は詩の中にワーグナー、ベートーベン、プッチーニ、ヴェルディが登場する。ロッカリアはロックとアリアの合成語と思われる。全米5位。

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OUT OF THE BLUE

1977年。2枚組ながら大ヒット。代表作。C面4曲は「雨の日のコンチェルト」というタイトルのついた組曲。「ターン・トゥ・ストーン」「スウィート・トーキン・ウーマン」「ミスター・ブルー・スカイ」収録。全米4位。

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DISCOVERY

1979年。時流に合わせたのか、音がややディスコ風。キーボードの比重が大きくなり、そうした流れの中で「ドント・ブリング・ミー・ダウン」の弦楽器排除がある。ポップさや派手さは以前と変わらないが、バックの演奏がコンパクトになっていく転機となったアルバム。「ロンドン行き最終列車」「コンフュージョン」収録。

ELO’S GREATEST HITS

1979年。「第三世界の曙」から「ディスカバリー」までのベスト盤。

 
XANADU/E.L.O.&OLIVIA NEWTON-JOHN

1981年。A面5曲がELOサイド、B面5曲がオリビア・ニュートン・ジョン・サイド。ELOサイドのうち、「ザナドゥ」はバックの演奏がELOで、ボーカルがオリビア・ニュートン・ジョン。この曲と「マジック」が出色。映画のサウンド・トラックなので作品としてのまとまりはあまりない。

9
TIME

1981年。「プロローグ」から続く「トワイライト」はアレンジが壮大な究極のポップスだと感じられるが大きなヒットにならなかった。切れ目なく続く「ロスト・ワールド2095」もいい曲。ELOのオリジナル・アルバムとしては「ディスカバリー」以来だが、サウンドはその「ドント・ブリング・ミー・ダウン」の路線をさらにエレクトロニックにしている。曲中の効果音に凝っている。

10
SECRET MESSAGE

1983年。曲のきらびやかさ、アレンジの面白さは明らかに劣ってきた。サウンドに関してはもはや目新しさを打ち出すことが困難になり、加えてメロディーが平板化して目の覚めるような上昇や下降が減っている。「フォー・リトル・ダイアモンド」収録。

11
BALANCE OF POWER

1986年。前作は4人編成で録音されているが、今回はベースが脱退し、3人になっている。編成ではすでにバンドの体をなしていないが、サウンドの方もソロ・アーティストの作品と変わらないくらいにコントロールされており、ロックのダイナミックさがない。

FIRST MOVEMNT

1987年。初期のベスト盤。デビュー盤から6曲、「II」から5曲、「第三世界の曙」から「ショウダウン」を収録。

 
AFTERGROW

1991年。3枚組ベスト。未発表9曲。解説、ディスコグラフィーなど資料的価値が大きい。

 
ELO PART II/ELO PART II

1991年。邦題「銀河の探索者」。ジェフ・リン以外のメンバーが中心となって結成された疑似ELOバンド。全盛期のサウンドに近く、前半はビートルズを思い出させる。曲は新加入のギターとキーボード、ドラムのベブ・ベバンが大半を書いている。ストリングも入っており、音が厚い。プロデュースはカンサスのプロデューサーだったジェフ・グリックスマン。

 
ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA PART TWO PERFORMING ELO'S GREATEST HITS LIVE FEATURING THE MOSCOW SYMPHONY ORCHESTRA/ELO PART II

1992年。1曲を除いて9曲がELO時代のヒット曲。モスクワ交響楽団と共演。このときの編成はチェロとバイオリンを含む8人編成。「見果てぬ想い」「テレフォン・ライン」はスタジオ・バージョンよりかなり遅い。合唱隊があった方がいいと感じる。MCは最後以外カットされている。

 
MOMENT OF TRUTH/ELO PART II

1994年。ストリングスもちゃんと入った編成。ロックとクラシックの融合というほどたいそうなものではないが、「シークレット・メッセージ」以降の本家よりは楽しめる。

FLASHBACK

2000年。3枚組。未発表7曲。

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ZOOM

2001年。ほとんどジェフ・リンのソロをELOの名義で出したアルバム。曲は往年のELOサウンドで、コーラスもストリングスも入っている。さすがに「アウト・オブ・ザ・ブルー」や「エルドラド」の勢いはない。ジョージ・ハリソン、リンゴ・スター参加。

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ALONE IN THE UNIVERSE/JEFF LYNNE'S ELO

2015年。ほぼ全ての楽器をジェフ・リンが演奏し、コーラスも1人で多重録音している。ストリングスはキーボードで代用している。後期ビートルズと60年代ポップスに傾倒したサウンドになっているのはジェフ・リンの趣味がそのまま反映されているからだろう。1人で作曲、録音することのマイナス面が出ており、曲が似通っている。特にボーカルメロディーはジェフ・リンが歌いやすい声域に限られ、ドラムやキーボードは演奏技術の範囲内で演奏するため、表現力の豊かさがない。1人が全てを制御する手法が多様性を阻害するという点は、文化や社会全般に通じる。全体的にミドルテンポとなっており、ややアップテンポと言えるのは「ダーティ・トゥ・ザ・ボーン」「エイント・イット・ア・ドラッグ」「ワン・ステップ・アット・ア・タイム」の3曲。

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FROM OUT OF NOWHERE/JEFF LYNNE'S ELO

2019年。「ワン・モア・タイム」のピアノをELOのリチャード・タンディが弾き、それ以外のメロディー楽器は全てジェフ・リンが演奏している。オープニング曲のアルバムタイトル曲から、70年代のELOを再構成したようなメロディーになっている。制作の過程ではプログラミングや電子機器も使っているだろうが、曲の中にはそれを思わせる音をほとんど入れていない。この時代の技術や流行をジェフ・リンが取り入れたらどうなるのかというのは、多くの人が関心を持つ。しかしジェフ・リンは保守的だ。「ヘルプ・ユアセルフ」「ルージング・ユー」は70年代のアルバムに入っていても違和感はない。