KRAFTWERK

  • ドイツの電子音楽グループ。シンセサイザー音楽、エレクトロ音楽では世界的に有名。
  • 全盛期はラルフ・ヒュッター、フローリアン・シュナイダー、ウォルフガング・フリューア、カール・バルトスの4人。
  • 代表作は「アウトバーン」「ヨーロッパ特急」「人間解体」、代表曲は「アウトバーン」「放射能」「ヨーロッパ特急」「ロボット」「モデル」「ミュージック・ノン・ストップ」など。日本では「電卓」も有名。

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KRAFTWERK

1970年。オルガンのラルフ・ヒュッターとフルート、バイオリンのフローリアン・シュナイダーが中心となって作った前衛音楽。4曲収録。クラシックにおける現代音楽に当たらないと判定できる根拠はポピュラー音楽的なドラムと各楽器の電気的増幅だ。「ストラトヴァリウス」はストラトキャスターとストラディヴァリウスの合成。A面は曲に一般性があるが、B面は即興音楽に近い。ドイツ30位。

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KRAFTWERK2

1972年。ドラムの参加がなくなり、ラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーの2人で録音している。即興性はあるかもしれないが、実験性は取り立ててあるとも言えない。「クリンゲルクラン」は17分半、他の曲は2分台から9分台。ドイツ36位。

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RALF&FLORIAN

1973年。シンセサイザーでポピュラー音楽を作る意志が明確なサウンド。リズム感があり、それに合わせて音階が動く。「アウトバーン」以降のサウンドと直接つながり、初期の3枚の中で最も聞きやすい。全米160位。

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AUTOBAHN

1974年。A面は「アウトバーン」1曲、B面は4曲。「アウトバーン」は車に乗るところから描写が始まる。車に追い越される音も再現する。陰鬱ではなく、明るめのサウンドと分かりやすいテーマだったことが好意的にとられた。「大彗星(鼓動)」「朝の散歩」は前作に収録されていても違和感はない。2人加入し、このアルバムから4人編成。ドイツ7位、全英4位、全米5位。

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RADIO-ACTIVITY

1975年。邦題「放射能」。アルバム全体が無線、ラジオ、放射線をテーマにしており、電波の発信音やラジオの同調を思わせる電子音が随所に入っている。「放射能」「ラジオランド」「ウラニウム」は恐さを感じさせる。「エアウェーヴス」はポップだ。「オーム・スウィート・オーム」は「埴生の宿」を思わせる民謡調のメロディーがある。長い曲でも6分台になり、長時間の曲はない。ジャケットはナチスドイツが普及させようとしたラジオ受信機が使われている。「放射能」は2015年現在、ライブの映像でチェルノブイリ(ソ連、世界最悪の事故)、ハリスバーグ(スリーマイル島、アメリカ最悪の事故)、セラフィールド(イギリス、世界初の重大事故)、広島、福島の地名が流される。カール・バルトスが加入し、全盛期の4人が揃った。ドイツ22位、フランス1位、全米140位。

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TRANS-EUROPE EXPRESS

1977年。邦題「ヨーロッパ特急」。「ヨーロッパ特急」と「メタル・オン・メタル」のメドレーが「アウトバーン」の鉄道版を思わせるが、このメドレーは同じメロディーを執拗に繰り返し、単調さを強調している。前作にあった意図的雑音がなく、シンセサイザーの冷たさが出ている。アコースティック楽器の人間味を排除したサウンドを、グループとして初めて完成させたと言える。ドイツ32位、全英49位、全米119位。

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THE MAN MACHINE

1978年。邦題「人間解体」。人間と機械文明の関係というよりは都市生活についてをテーマにしている。人間が機械の一部と化し、人間性を失いつつあるという解釈は、サウンドが人工的だからこそ説得力が出る。そのような解釈が出るのは、人間を温かみのある血の通った存在として、機械の相対物のように見ようとするから、つまり20世紀的見方をするからであって、ロボットの状況判断力や表現力が一部の人間よりも優れるようになる時代には、その解釈も変わるかもしれない。「モデル」はクラフトワークにしては長い歌詞が付いており、「ロボット」「マン・マシーン」の社会的メッセージ性とバランスをとるかのように世俗的だ。ドイツ12位、全英9位、全米130位。

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COMPUTER WORLD

1981年。アルバム全体のテーマが初めて人間よりも小さな対象物となった。「コンピューター・ワールド」も「kンピューター・ラヴ」も持続音でメロディーが作られており、「人間解体」よりは人間味がある。「コンピューターはボクのオモチャ」は「メタル・オン・メタル」のような曲。「ナンバース」には「いち、に、さん、し」という日本語が歌詞に含まれる。「ポケット・カルキュレーター」は日本語版が「電卓」として発表されている。ドイツ7位、全英15位、全米72位。

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ELECTRIC CAFE

1986年。ディスコやニューウェーブ、アダルト・オリエンテッド・ロックの流行でシンセサイザーがごく一般的な楽器となり、クラフトワークの独自性は幾分失われている。「テレフォン・コール」は「モデル」と同様、全編に歌詞がある。「セックス・オブジェクト」は本格的にアナログ楽器に似せ、弦楽合奏とドラム、ギター、ベースが明確に意識されている。ドイツ23位、全英58位、全米158位。

THE MIX

1991年。過去の曲のリミックス盤。カール・バルトス、ウォルフガング・フリューアが抜け、初期の2人に戻った。「アウトバーン」「ヨーロッパ特急」「メタル・オン・メタル」などは短くなっている。日本語の歌詞が付いた「電卓」を収録。「放射能」はチェルノブイリ、ハリスバーグ、セラフィールド、広島を歌詞に入れている。ドイツ6位、全英15位。

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TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS

2003年。邦題「ツール・ド・フランス」。自転車レースで有名なツール・ド・フランスをテーマとしている。「プロローグ」から「クロノ」まで19分がつながっており、「アウトバーン」や「ヨーロッパ特急」「メタル・オン・メタル」と同様、アナログレコードを意識した編曲だ。ボーカルは情緒性もストーリー性も極力排除している。テクノ、クラブミュージックが一般的になっているので、クラフトワークの独自性や優位性は薄れている。ドイツ1位、全英21位。

MINIMUM-MAXIMUM

2005年。ライブ盤。2枚組。「アウトバーン」から「ツール・ド・フランス」まで全てのアルバムから選曲されている。有名曲は歓声が大きい。「電卓」は東京でのライブ。他の曲は世界各地から選ばれている。「ロボット」は「サ・ミックス」収録のバージョンで演奏されている。アルバムタイトルは「エレクトロ・カルディオグラム」の歌詞の一節。ドイツ26位、全英29位。

THE CATALOGUE

2009年。「アウトバーン」から「ツール・ド・フランス」までの8枚組セット。