LINKIN PARK

  • ロックにヒップホップのサウンド部分を取り入れたバンド。アメリカ出身。
  • 通常ボーカル、ラップボーカル、ギター、ベース、ドラム、DJの6人編成。
  • 「ハイブリッド・セオリー」でヒップホップを取り入れたロックを具体化、「メテオラ」で完成させている。
  • ヒップホップの音だけを採用し、アフリカ系にみられる態度やファッションまで取り入れているわけではないので、白人中産階級に広く受け入れられている。
  • ボーカルのチェスター・ベニントンは2017年死去。

1
HYBRID THEORY

2001年。ラップで歌うボーカルと、メロディーを歌うボーカルがいる。ベースはいないがDJがメンバーに含まれる5人編成。アメリカ・ロサンゼルス出身。曲のほとんどの部分はメロディーがついており、ラップがメーンとなる曲は少ない。むしろ、ラップはメロディー部分の合間に、合いの手のように差し挟まれていることが多い。メロディーのあるボーカルが主でラップが従である関係は従来のロック・ファンになじみやすく、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやリンプ・ビズキットのファンを取り込みながら、それ以外のロック・ファンも大量に獲得したと思われる。バンドサウンドは人工的で、スクラッチもキーボードもふんだんに使っている。しかし、どの曲でもロックのビート感を残しており、ヒップホップそのものという曲は「キュア・フォー・ザ・イッチ」くらいだ。

 
IN THE END

2002年。ベースが加入し6人編成。7曲入りシングル。ライブが3曲、アルバム未収録曲が3曲。「マイ・ディッセンバー」収録。

 
REANIMATION

2002年。「ハイブリッド・セオリー」の全曲をリミックスした企画盤。KORN、ステインド、デフトーンズのメンバーが参加。全体的にヒップホップの傾向が強い。メロディアスなボーカルやドラムはあまり出てこない。キーボードとコンピューターを駆使して作ったような音。日本盤ボーナストラックではマリリン・マンソンが参加。

2
METEORA

2003年。曲によってはラップが入らず、一般的なロックとして通用する曲もある。朗々と歌い上げるボーカルが多くなった。1曲の平均が3分以下で、アルバムが36分で終わるというのはとても聞きやすい。「サムホエア・アイ・ビロング」収録。「ノーバディーズ・リスニング」は尺八がメロディーを主導。ストリングスも増えた。「フェイント」収録。

LIVE IN TEXAS

2003年。ライブ盤。DVDとCDの2枚組。

 
COLLISION COURSE/JAY-Z・LINKIN PARK

2004年。ヒップ・ホップのジェイ・Zと共演した企画盤。ジェイ・Zとリンキン・パークの曲をつなげている。DVDとCDの2枚組。DVDはライブ、CDはスタジオ録音。

3
MINUTES TO MIDNIGHT

2007年。サウンドの根幹を大きく変化させた。メンバーにはラップのボーカルを担当するマイク・シノダも含まれているが、全曲を通してラップで歌われる部分はない。マイク・シノダはキーボード奏者としての活躍が多い。通常のボーカルのチェスター・ベニントンもラウド・ロックのような絶叫型ボーカルはなく、歌い上げるボーカルだけだ。ドラム・ループは随所にあるので、DJがいる意味は失われていないが、バンドの特徴として、ヒップホップを取り入れたミクスチャー・ロックという言い方はしにくくなった。雰囲気も全体的に暗めで、ロックの勢いや激しさを感じさせることは少ない。

 
LEAVE OUT ALL THE REST

2008年。シングル盤。3曲入り。同じ曲のアルバム・バージョン、ライブ、マイク・シノダ・リミックスの3種類を収録している。日本のみ発売。

 
SONGS FROM THE UNDERGROUND

2009年。未発表曲を収録した企画盤。アジア地域だけで発売されているという。ライブ2曲のほか、デビュー前の1999年に録音されたデモ曲などを収録。「パート・オブ・ミー」は5分の曲のあと、5分のブランクがあり、2分40秒のインストが出てくる。

 
LP UNDERGROUND 9:DEMOS

2009年。邦題「デモ・トラックス」。1998年から2007年までのデモ曲を9曲収録。1分に満たない曲やボーカルが入っていない曲が複数あると、二番煎じの印象は否めない。

4
A THOUSAND SUNS

2010年。エレクトロニクス、キーボードの比重が大きくなり、ギター、ドラムは少なくなっている。15曲収録されているが、序曲や曲間の効果音も含まれるので、実質は9曲。不気味さや冷たさが全体を覆う。曲の集合としてのアルバムではなく、曲の連なりを重視した作風だ。アルバムを出すたびに聞き手の驚きを呼び起こす。「ホエン・ゼイ・カム・フォー・ミー」はアフリカン・ドラムとラップでたたみかける。「ブラックアウト」のボーカルはスクリーモ風。「イリディセント」「ザ・カタリスト」「ウェイティング・フォー・ジ・エンド」は歌い上げるメロディーだ。

5
LIVING THINGS

2012年。デビュー当初から持っているリンキン・パークの個性を忠実に再現している。キーボードというよりはエレクトロニクスがメロディー、リズムを構成し、真面目で伸びやかなボーカルが満たされなさを含んだメロディーを歌う。12曲が独立しており、間奏はない。アメリカの中産階級にとっては安心して他人に勧められる内容だが、大きな驚きはなく刺激に乏しい。「バーン・イット・ダウン」収録。

6
THE HUNTING PARTY

2014年。これまでで最もハードなサウンドとなっている。どんな心境の変化があったのか。厚いギターやエレクトロニクスで演奏するのはずっと変わらないが、哀感のあるメロディーと絶叫型のボーカル、加工されたボーカルをうまく掛け合わせ、前のめりのテンポで覆い被さるように展開する。「ウォー」はハードコア風。システム・オブ・ア・ダウンのダロン・マラキアンが参加している「レベリオン」はキーボードの基本メロディーが覚えやすい。「ファイナル・マスカレード」のイントロとなっている「ドローバー」はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロが参加している。ハードなサウンドになったことによってメロディーのよさが引き立つようになった。

7
ONE MORE LIGHT

2017年。職業作曲家を迎え、音楽性を広げた。ギターよりもキーボードがメインになる曲が多い。これまでも「ア・サウザンド・サンズ」や「リヴィング・シングス」のようなキーボード、シンセサイザー主導のアルバムはあったが、このアルバムではラップによるボーカルも少なく、バンドサウンドも攻撃的ではないのでロックらしさは抑えられている。リンキン・パークよりもチェスター・ベニントンのボーカルを聞かせるようなアルバムだ。職業作曲家が加わっているのでそれぞれの曲はよく、リンキン・パークの一方の極を示したアルバムと言える。このアルバムが発表された後、チェスター・ベニントンが死去。

ONE MORE LIGHT LIVE

2017年。ライブ盤。チェスター・ベニントンが死去してから発売された。16曲収録。「ワン・モア・ライト」収録曲は8曲ある。前半はキーボード中心の穏やかな曲が続く。もともとハードな曲の「クローリング」はバラード風に編曲されている。後半の「ワット・アイヴ・ダン」「イン・ジ・エンド」は盛り上がるが、全体として「ワン・モア・ライト」の雰囲気を受け継いでいるため、豪快で破壊的というようなイメージではない。最後の「ブリード・イット・アウト」は最後の曲らしく、ハードな雰囲気で終わる。チェスター・ベニントンの追悼という意味合いが大きいライブ盤だ。