RAGE AGAINST THE MACHINE/ONE DAY AS A LION

  • ボーカルのザック・デ・ラ・ロチャ、ギターのトム・モレロを中心とするバンド。
  • ヘビーロックにヒップホップ風の歌い方を取り入れたバンドとして初めて世界的に成功した。
  • 政治的主張が明確、直接的で、男性から多く支持を受ける。
  • トム・モレロはハーバード大学の政治学科を首席で卒業したとされている。
  • 2000年ごろ活動停止。トム・モレロはオーディオスレイヴ、ナイトウォッチマン等で活動、ザック・デ・ラ・ロチャはワン・デイ・アズ・ア・ライオンを結成している。

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RAGE AGAINST THE MACHINE/RAGE AGAINST THE MACHINE

1992年。ボーカルのザック・デ・ラ・ロチャ、ギターのトム・モレロを中心とする4人組。ボーカルが最初から最後までラップで、キーボードやスクラッチを使わない。歌詞は政治的で、言葉は直接的だ。エンターテイメント上の使い古された手法であることは否めないが、同調する若い音楽ファンは多いだろう。ヒップホップでよく使われるスクラッチを使わず、ラップだけを導入したことは、ロックファンの抵抗を少なくする効果があったのではないか。ザック・デ・ラ・ロチャのボーカルはパブリック・エナミーのフレイヴァー・フレイヴに似ており、チャック・Dがいないロック版パブリック・エナミーという感じだ。「ボムトラック」「キリング・イン・ザ・ネイム」「ノウ・ユア・エナミー」収録。「ブリット・イン・ザ・ヘッド」の途中がエイプリル・ワインの「レーダー・ラブ」のイントロと同じなのは偶然か。ジャケットはベトナム戦争時に焼身自殺した僧の写真。当時はこのような焼身自殺が世界各地であり、フランスのパリでも1969年に学生が焼身自殺をしている。翌年にはそのことを歌った新谷のり子の「フランシーヌの場合」が日本でヒットしている。全米45位、300万枚。

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EVIL EMPIRE/RAGE AGAINST THE MACHINE

1996年。前作に続き、ギター、ベース、ドラムだけで音を構成し、スクラッチや効果音はギターが擬音を弾いている。このアルバムは特定の国や人物を非難しているのではなく、帝国主義を非難の対象としている。「ピープル・オブ・ザ・サン」はスペインのメキシコ上陸、「タイヤー・ミー」はフランス植民地時代のラオス、「ウィズアウト・ア・フェイス」は1910年代のメキシコ、「ウインド・ビロウ」はアメリカ資本に搾取される現代のメキシコ、「ロール・ライト」は天安門事件のころの中国を歌う。「ベトナウ」はベトナムとナウを合成した単語だろう。全米1位、300万枚。

 
LIVE&RARE/RAGE AGAINST THE MACHINE

1997年。ライブ10曲、未発表曲2曲。「イントロ」はパブリック・エナミーのカバー。「ファック・ザ・ポリス」はN.W.A.のカバー。「ザパタズ・ブラッド」「ウィズアウト・ア・フェイス」「ハッダ・ビー・プレイング・オン・ザ・ジュークボックス」はアルバム未収録曲。未発表のスタジオ録音はいい曲だ。日本独自企画盤。

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THE BATTLE OF LOS ANGELES/RAGE AGAINST THE MACHINE

1999年。ギターの音に厚みがあり、サウンド全体に重量感がある。重ね録りでギターを2本にし、1本で演奏できない部分も出てくる。「ゲリラ・ラジオ」収録。「スリープ・ナウ・イン・ザ・ファイアー」はコロンブスの新大陸到達、ベトナム戦争の枯れ葉剤作戦、広島が出てくる。このバンドはその主張や意義などが重視されているが、彼らの主張自体はそれほど目新しくない。スローガンと音楽が密接にリンクしている例はイギリスのパンクのロック・アゲインスト・レイシズムにもあった。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの歌詞は直接的、刺激的で分かりやすく、短期間に多くの支持者を獲得できるのも理解できる。同じような主張を間接的に表現してきたロック・アーティストも多数いる。そうしたアーティストの積み重ねの上に今のロックがある。ただ、ロックが政治的攻撃性が鈍っていたのは事実で、特に80年代はまじめに主義主張を叫ぶことが恥ずかしくなるような時代だった。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがその点を突いて、徹底的に、直接的に、新しいスタイルで行ったことは賞賛の対象だ。白人のヘビーメタルと黒人のヒップホップを掛け合わせ、合体させるのは手法として誰でも考えつくが、頭の中で考えることと実際にやることの間には大きな壁があり、そこを超えたからこそ評価される。全米1位、200万枚。

 
GUERRILLA RADIO/RAGE AGAINST THE MACHINE

1999年。シングル盤。ライブ1曲収録。

 
SLEEP NOW IN THE FIRE/RAGE AGAINST THE MACHINE

2000年。シングル盤。ライブ4曲収録。ライブには「ゲリラ・ラジオ」と「フリーダム」を含む。

 
RENEGADE/RAGE AGAINST THE MACHINE

2000年。カバー集。カバーしているのは順に、ヒップホップのエリックB&ラキム、ウェストコースト・ロックのヴォリューム10、MC5、ヒップホップのアフリカ・バンバータ、ニューウェーブのディーヴォ、ヒップホップのEPMD、ハードコアパンクのマイナー・スレット、サイプレス・ヒル、ブルース・スプリングスティーン、ストゥージズ、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン。12曲のうちヒップホップは3曲。全米14位、100万枚。

 
LIVE AT THE GRAND OLYMPIC AUDITORIUM/RAGE AGAINST THE MACHINE

2004年。ライブ盤。2000年のライブ。スタジオ盤よりも迫力がある演奏。観客の合唱がデモ隊のシュプレヒコールにも聞こえる。

 
ONE DAY AS A LION/ONE DAY AS A LION

2008年。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのボーカル、ザック・デ・ラ・ロチャと、マーズ・ヴォルタのドラム、ジョン・セオドアのグループ。ザック・デ・ラ・ロチャはボーカル兼キーボード。5曲入りEP盤。キーボードとドラムだけで演奏され、ボーカルはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンと同じようにラップで歌い、高めの声で煽りながら高揚感を高めていく。キーボードはほとんどオルガンのみで、ベースもオルガンで代用している。5曲で20分と短いのでオルガンとドラムだけでも成り立つが、アルバムを作るなら多少の工夫が必要だろう。