PRIMAL SCREAM

  • イギリスのロックバンド。キーボードを含む6人編成。中心人物はボーカルのボビー・ギレスピー。
  • 「スクリーマデリカ」でエレクトロニクスを取り入れ、アシッドハウス、クラブミュージックに近づいた。
  • アルバムごとにサウンドが変わる。代表作は「スクリーマデリカ「エクスターミネーター」。

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SONIC FLOWER GROOVE

1987年。ギター2人、ドラム不在の4人編成。ボーカルのボビー・ギレスピーはジーザス&メリー・チェインのドラムだった。全曲が60年代中期のザ・バーズのように12弦ギターで演奏され、流れるようなメロディーになっている。ボーカルはリラックスして歌い、感情を込めて歌ったり、力んだりしない。キーボードは若干使われるが、曲の中心にはならない。12弦ギターの音色やザ・バーズのイメージからややサイケデリックロックの雰囲気があるが、メロディーが明るめなので、聞き手を選ぶような印象はない。日本盤は1994年発売。全英62位。

2
PRIMAL SCREAM

1989年。ドラムが加入し、12弦ギターが抜けた。ベースがギターに転向し、ギター2人、ベース不在の4人編成。70年代のロックン・ロールのよさと、気だるさの伴うボーカルがうまくかみ合っている。モット・ザ・フープル、特に「メンフィスからの道」を思わせるメロディーが2曲出てくる。ボーカルの歌い方が変わっていても曲のよさが分かるのはすばらしい。前作のような12弦ギターは出てこない。

3
SCREAMADELICA

1991年。オープニング曲はゴスペル風女声コーラスを取り入れたロック。2曲目からはエレクトロニクスを大幅に導入し、サックスやパーカッションも使ってテクノ風ロックをやっている。麻薬を使ったときの浮遊感に似た感触があるという。一般的にはそうした感覚をロックで表現すればサイケデリックロック、テクノやハウスで表現すればアシッドハウスと言うが、このアルバムはアシッドハウスの影響を受けたロックといえる。イギリスで80年代末に起こった享楽的な空気ををロックに反映したアルバムの一つとして、ストーン・ローゼズの「石と薔薇」とともに重要な評価をされている。「スリップ・インサイド・ディス・ハウス」は13thフロア・エレベーターズのカバー。代表作。全英8位。

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GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP

1994年。ベース、キーボードが加入し6人編成。ロック・サウンドに戻り、女声ボーカル、ホーン・セクション、オルガン、ピアノ等を使ってソウルに近づいている。サザン・ロックのような豪快さや開き直りはなく、泥臭い黒人のイメージがある。アメリカのシンガー・ソングライターが、過去の人生を振り返って内省的になったようなサウンド。このようなサウンドは主にアメリカのアーティストが出すことが多く、イギリスのバンドでもそれほど多くない。「ロックス」はすばらしい。全英2位。

ROCKS/FUNKY JAM

1994年。シングル盤。「ロックス」はローリング・ストーンズの「サティスファクション」のリズムを利用したローリング・ストーンズのような曲。プライマル・スクリームの最大のヒット曲。

 
COME TOGETHER

1994年。シングル盤。7曲のうち2曲は「カム・トゥゲザー」、3曲は「ローデッド」。「カム・トゥゲザー」は「スクリーマデリカ」収録曲。

 
DIXIE-NARCO EP

1994年。EP盤。1曲目の「ムーヴィン・オン・アップ」は「スクリーマデリカ」収録曲。「スクリーマデリカ」は10分を超える。

 
JAILBIRD

1994年。シングル盤。オリジナル・バージョンと、有名アーティストによるリミックス4曲収録。ザ・ダスト・ブラザーズは現在のケミカル・ブラザーズ。「スウィーニィ2・ミックス」と「ウェザオール・ダブ・チャプター3・ミックス」はアンドリュー・ウェザオールのリミックス。

 
(I'M GONNA)CRY MYSELF BLIND

1995年。シングル盤。「ロックス」「アイム・ルージング・モア・ザン・アイル・エヴァー・ハヴ」はライブで、切れ目のない同一の公演でのライブ。

 
THE BIG MAN & THE SCREAM TEAM MEET THE BARMY ARMY UPTOWN

1996年。シングル盤。3曲ともアルバム未収録曲。「ア・ジェイク・スプリーム」は語りのみ。

5
VANISHING POINT

1997年。同名の映画をテーマにしたアルバムだという。「スクリーマデリカ」のようなサウンドではないものの、エレクトロニクスを再び導入し、角の立った鋭い音を作った。「スクリーマデリカ」とは違い、多くの曲がアップテンポで、ロックのビート感や勢いがある。「モーターヘッド」はモーターヘッドのカバー。全英2位。

 
KOWALSKI/STAR

1997年。シングル盤。「96つぶの涙」は?(クエスチョン・マーク)&ザ・ミステリアンズのカバー。13thフロア・エレベーターズ以来2度目のガレージ・ロックのカバー。

 
BURNING WHEEL

1997年。シングル盤。ダスト・ブラザーズから改名したケミカル・ブラザーズがリミックスを行っている。ロックとダンス音楽の垣根を下げた立役者。「ハモンド・コネクション」はハモンド・オルガンを使ったインスト曲。

 
ECHO DEK

1997年。「バニシング・ポイント」をリミックスした企画盤。イギリスのプロデューサー、エイドリアン・シャーウッドによるダブのリミックス。全英43位。

 
IF THEY MOVE KILL 'EM-MY BLOODY VALENTINE ARKESTRA

1998年。シングル盤。「ダークランズ」はジーザス&メリー・チェインのカバー。「バッドランズ」はそのインスト・バージョン。

 
SWASTICA EYES

1999年。「スワスティカ・アイズ」のリミックス3曲と短縮バージョン。短縮バージョンは4分以下、リミックスの3曲は6、7、8分。

6
XTRMNTR

2000年。邦題「エクスターミネーター」。ロックのハードさとテクノ、ハウスのビートをうまく折衷させた。「アクセラレーター」のイントロはブラック・サバスを思い出させるようなメロディーをノイズの塊で演奏する。アルバムタイトル曲はベースの音が大きく、ダブの手法をとっている。「ビルズ」はボーカルのメロディーがあまりなく、ヒップ・ホップ風だ。「ブラッド・マネー」はジャズ風ホーン・セクションが入るインスト曲。バラエティーに富んだアルバムで、その懐の深さを評価すべきアルバムだろう。全英3位。

 
KILL ALL HIPPIES

2000年。「ホエン・ザ・キングダム・カムズ」はダムド、スタイル・カウンシルのポール・ウェラーがギターで参加。「エクスターミネーター」はマッシヴ・アタックがリミックス。「ザ・リヴェンジ・オブ・ザ・ハモンド・コネクション」は「ハモンド・コネクション」の続編。インスト曲。

MS LUCIFER

2002年。シングル盤。「ミス・ルシファー」のアルバム収録バージョンとリミックス3曲収録。

7
EVIL HEAT

2002年。前作同様にエレクトロニクスを使用しているが、音の詰め込み具合や圧迫感は前作ほどではない。「ライズ」、「シティ」や「スカル・X」はパンク・ロックの雰囲気を残している。ロックとエレクトロニクスの主従関係がそのまま「エクスターミネーター」と「イーヴル・ヒート」の違いになっている。全英9位。

 
AUTOBAHN 66

2002年。シングル盤。「アウトバーン66」のオリジナルとリミックス3曲、ライブ4曲を収録。ライブのうち2曲は日本盤のみという。

 
LIVE IN JAPAN

2003年。ライブ盤。2002年の公演を収録。同一のライブではなく、3日分の公演から選曲している。フェードアウトがなく、実際のライブに近い雰囲気がある。シングルになった曲を中心に、ベスト盤ができるような選曲で、実際に半分以上の曲が「ダーティー・ヒッツ」と重なっている。「ロックス」は歓声が大きい。日本のみの発売。

 
DIRTY HITS

2003年。ベスト盤。「サム・ヴェルヴェット・モーニング~ビロードのような朝」は別バージョンを収録。それ以外の17曲はアルバム、シングル収録曲と同じ。全英25位。

SHOOT SPEED(MORE DIRTY HITS)

2004年。ベスト盤の第2弾。日本のみの発売。

8
RIOT CITY BLUES

2006年。60年代後半のローリング・ストーンズと70年代前半のグラム・ロックを合わせたようなサウンド。ボーカルは特にローリング・ストーンズとモット・ザ・フープルに近い。エレクトロニクスは使わず、明るめのロックン・ロールで聞きやすい。ハーモニカやバイオリン、ピアノが60年代、70年代らしさを強調する。「カントリー・ガール」収録。全英5位。

9
BEAUTIFUL FUTURE

2008年。アルバムタイトルが希望に満ちており、そのタイトル曲がオープニング曲にもなっている。明るい曲が多く、前作の雰囲気を受け継いでいる。70年代風ロックン・ロールもそのままだ。歌詞はややとげがある。1967年のフラワー・ムーブメントに対する若干のあこがれが見える。バンド演奏が中心で、エレクトロニクスを取り入れたかつてのサウンドはほとんど面影もない。「オーヴァー&オーヴァー」はフリートウッド・マックのカバー。全英9位。

10
MORE LIGHT

2013年。バンドサウンドを中心とし、これまでに実践してきたサイケデリック、アシッドの要素をちりばめたサウンド。「ライオット・シティ・ブルース」から続く60、70年代への傾倒もある。60年代後半にビートルズやローリング・ストーンズが東洋音楽に興味を示し、それをバンドサウンドに反映したのと同じように、プライマル・スクリームもヨーロッパの映画音楽や70年代ソウルなどを分かりやすく反映している。シンセサイザーの人工的な音が支配的になる前の、アナログ楽器が持つ豊かな表現力に魅力を感じたようだ。「リヴァー・オブ・ペイン」「サイドマン」は東洋的な雰囲気がある。「ウォーキング・ウィズ・ザ・ビースト」はダルシマが使われるため東洋風に聞こえるが、曲はごく普通。「ヒット・ヴォイド」「インヴィジブル・シティ」はロックンロール。「エリミネイション・ブルース」はロバート・プラントが参加している。全英12位。

11
CHAOSMOSIS

2016年。前作よりもエレクトロニクスを多く取り入れているが、バンドサウンドを維持している。「(フィーリング・ライク・ア)ディーモン・アゲイン」「ホエン・ザ・ブラックアウト・ミーツ・ザ・フォールアウト」「カーニヴァル・オブ・フールズ」「オータム・イン・パラダイス」はエレクトロニクス寄りになったような印象を与えるが、アルバムが全面的にエレクトロ化しているわけではない。「プライヴェート・ウォーズ」はアコースティックギター中心の曲。オープニング曲はローリング・ストーンズのような雰囲気がある。「ホエア・ザ・ライト・ゲッツ・イン」の女性ボーカルはスカイ・フェレイラ。「トリッピン・オン・ユア・ラヴ」「ワン・ハンドレッド・パーセント・オア・ナッシング」はハイムの3人がコーラスで参加するがボーカルは取らない。「プライヴェート・ウォーズ」の女性ボーカルはキャッツ・アイズのボーカル。