ARCH ENEMY

  • イン・フレイムス、ダーク・トランキュリティーと並ぶ代表的なメロディックデスメタル・バンド。スウェーデン出身。
  • ギターはマイケル・アモットとクリストファー・アモットの兄弟。
  • ボーカルは当初はヨハン・リーヴァ、「ウェイジズ・オブ・シン」からは女性のアンジェラ・ゴソウ。

1
BLACK EARTH

1996年。ボーカルがベースを兼任、ギター2人の4人編成。スウェーデン出身。ギターのマイケル・アモットは元カーカスで、スピリチュアル・ベガーズのメンバー。もう1人のギターは弟のクリストファー・アモット。ボーカルはデス声だがバックの演奏はメロディアスなヘビーメタル。2本のギターが両方ともマイケル・シェンカーやウリ・ジョン・ロートのようにエモーショナルなメロディーを弾く。ボーカルも力のある声。

2
STIGMATA

1998年。専任のベースが加入したので5人編成。前作はボーカルがデス声だといってもバックはあくまでオーソドックスなヘビーメタルの範囲内だった。今回はオープニング曲からスラッシュメタル、あるいはデスメタルのリズムであり、サウンドだ。ギターソロで突然出てくる流麗なメロディーは印象的に響く。

3
BURNING BRIDGES

1999年。前作と同路線。「デッド・インサイド」はギターが普通のヘビーメタル、ドラムの一部とボーカルだけがスラッシュメタル、デスメタル。「シルヴァーウィング」は長調のギターソロが多い。「怒りの叫び」はヨーロッパのカバー。

BURNING JAPAN LIVE 1999

2000年。ライブ盤。

4
WAGES OF SIN

2001年。ボーカルが女性に交代。デス声で歌っているが、表現力は前任者に及ばない。曲の成り立ちが分かりやすく、ギターソロの部分は明確にギターソロを弾いている。したがって、曲の構成は単純にロックと同じ。キーボードを使用する曲がいくつかあるが、サウンドそのものは従来踏襲。「レヴォナス」収録。

BURNING ANGEL

2002年。シングル。「ラメント・オブ・モータル・ソウル」はアルバム未収録曲で、アルバムに入っていてもおかしくはないが、ギターノメロディーはそれほど情緒的ではない。「スターブレーカー」はジューダス・プリーストのカバー。ボーカルはヨハン・リーヴァ。

5
ANTHEMS OF REBELLION

2003年。イントロを置いてメーンの曲に移行する曲が増えた。キーボードの使用もそのまま前作を引き継いでいるが、メロディアスなギターは減った。やや個性が失われたか。

 
DEAD EYES SEE NO FUTURE

2004年。6曲入りEP。「バーニング・エンジェル」「ウィ・ウィル・ライズ」はライブ。「狂乱のシンフォニー」はメガデス、「キル・ウィズ・パワー」はマノウォー、「硫酸どろどろなんでも溶かす」はカーカスのカバー。3曲とも原曲に忠実な演奏だ。

6
DOOMSDAY MACHINE

2005年。「ウェイジズ・オブ・シン」以来、曲の良さが回復した。メロディック・デスメタルなので、サウンドはハードだが、サウンドに対する姿勢は保守的だ。バンドの歴史上、女性のボーカルを入れた以外に、目新しいサウンド上の試みはほとんどない。曲が進むたびに著名なアーティストを思い出させるのは、それを上回る明確な特徴が見られないからである。曲やアルバム全体の質が、ヘビーメタルの中では高い方に位置するというところに、ヘビーメタル全体の問題点が存在している。曲によっては、ギターがウリ・ジョン・ロート並みにビブラートがかかる。

7
RISE OF THE TYRANT

2007年。前作の路線。覚えやすいメロディーが多い。最初に聞くときは新しいサウンドが出てくるかどうか注目するが、出てこない。これをどう評価するかは聞き手によるだろう。逆に、2度目以降は安心して聞ける。ボーカルが女性である意味が伝わりにくい。

 
THE ROOT OF ALL EVIL

2009年。男性ボーカルのヨハン・リーヴァが在籍していた時のアルバム3枚から12曲を選んで、現在の女性ボーカル、アンジェラ・ゴソウとともに再録音した企画盤。特に大きなアレンジの変更はなく、サウンドも従来通りだ。日本盤はカバー2曲とライブ3曲をボーナストラックとして収録。カバーはヨーロッパの「明日への翼」とクイーンズライチの「ウォーク・イン・ザ・シャドウ」。

8
KHAOS LEGIONS

2011年。アーク・エネミーのファンが期待するサウンド、ヘビーメタル・ファンが想定するアーチ・エネミーのサウンドを全く逸脱することなく制作されている。ギター、ドラムの切れの良さ、息の合ったアンサンブルがヘビーメタルのひとつの側面を理想的に実現している。メロディアスで濁りの少ないギターが、主流のヘビーロックとの違いを際だたせている。3曲あるインスト曲は次の曲への前奏のような短い曲。「ターン・トゥ・ダスト」はUFOの「ドクター・ドクター」のイントロに似ている。

9
WAR ETERNAL

2014年。ボーカルがジ・アゴニストの女性ボーカルに交代。ボーカルがデス声なのでサウンドに大きな影響はないが、デス声であってもその範囲内での音域が高めだ。雑誌記者であった前任ボーカルのアンジェラ・ゴソウは、ハードなロックを長く続けることの幼稚さをさすがに理解しており、他のアーティストとの知性の差を見せたとも言える。新しい女性ボーカルは作詞に参加しているが作曲には関わっていない。このアルバムは、人気の要であった女性ボーカルが代わったということで、サウンドに大きな変化がないということを示す必要があったとみられる。ストリングスを以前よりも多めに使っていることは、変化というほどの変化ではないだろう。

STOLEN LIFE

2015年。EP盤。9曲収録。ギターの1人が交代し、タイトル曲は新メンバーで新たに録音し直したバージョン。マイク・オールドフィールドの「シャドウ・オン・ザ・ウォール」をカバーしている。この曲をカバーするということは、マイク・オールドフィールドの同じアルバムに入っている有名曲の「ムーンライト・シャドウ」も知っているはずで、この曲をどうカバーするかの方が面白いだろう。ハードコアパンクのカバーも2曲収録している。残りの5曲は「ウォー・エターナル」収録曲のデモバージョン。

10
WILL TO POWER

2017年。アルバムタイトルはニーチェの「力への意志」と同じ。ニーチェの考え方を曲に反映させようとしたかどうかは不明だが、他人や他の集団に属する人間よりも自分が真っ当な人間であることの顕示が、過去よりも強くなっている現代をある程度言い当てている。ボーカルが女性のデス声という以外は一般的なヘビーメタルで、ハードさ一辺倒ではない。ミドルテンポ中心の「ジ・イーグル・フライズ・アローン」「リーズン・トゥ・ビリーヴ」は、メロディック・デスメタルから幅を広げようとしたのかもしれない。キーボードの背景音が重要になってきており、キーボード奏者をメンバーに加えてもいいのではないか。