DEAFHEAVEN

デフヘヴンはアメリカのシューゲイザー、ポストメタルバンド。ボーカル、ギター2人、ベース、ドラムの5人編成。ブラックメタルにシューゲイザーを被せたようなサウンドでデビューし「サンベイザー」でポストロックの要素も取り入れた高い評価を得た。

1
ROADS TO JUDAH

2011年。シューゲイザー、ポストロックの上に、ブラックメタルのボーカル、ドラムを合わせたような曲が4曲収録されている。ブラックメタルを含むヘビーメタルは、ギターを刻むように弾くことで他のジャンルとの音響的違いを明確にしたが、このアルバムはブラックメタルを含みながらギターの輪郭を曖昧にしている。シンセサイザーによる背景音も使う。オープニング曲の「ヴァイオレット」は12分あり、途中でブラックメタルの高速ドラムが2分強続く。「アンリクワイテッド」「トンネル・オブ・トゥリーズ」は長いブラックメタルの曲にシューゲイザーの一部を付け加えたような曲。日本盤はさらに、2010年のデモの4曲が収録されており、アコースティックギターの短い曲も含まれている。

2
SUNBATHER

2013年。ボーカル兼ピアノ、ギター兼ベース、ドラムの3人で録音。曲に多様性が生まれ、長さも3分から14分まで様々だ。7曲のうち、3分から6分までの短い曲はインスト曲で、ボーカルが入る4曲の間に配置されている。オープニング曲の「ドリーム・ハウス」はこれまでのブラックメタルでは表現し得なかった明るさがあり、それはシューゲイザーを取り入れたことによる大きな変化だ。アルバムタイトル曲も雰囲気を変えるための手段としてシューゲイザーが使われる。「プリーズ・リメンバー」「ウィンドウズ」は前衛音楽。「プリーズ・リメンバー」はミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」を朗読している。日本盤はモグワイのカバー曲を収録。

3
NEW BERMUDA

2015年。邦題「絶海」。前作よりもややシューゲイザーの要素は減り、ギターのメロディーで曲の印象を作っていく。ポストロックとブラックメタルとシューゲイザーをつなげたような曲が多いが、「ギフツ・フォー・ジ・アース」の前半はボーカルだけがブラックメタルで、演奏はポストロックだ。この曲に限らず、曲の後半で希望を感じさせるメロディーが多く出てくるのは、前作から継承したものだろう。

4
ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE

2018年。オープニング曲の「ユー・ウィズアウト・エンド」はピアノを中心とするロック。「カナリー・イエロー」「ニア」は後半でコーラスを入れる。「ナイト・ピープル」ではピアノ演奏をバックにゲスト参加の男女が通常のボーカルで歌う。ブラックメタル、シューゲイザーの部分は少なくなってきている。日本盤は出ていない。

5
INFINITE GRANITE

2021年。これまでで最も大きな音楽的変化を迎えた。1990年代以降のブリットポップのような浮遊感のある曲が大勢になり、ボーカルも多くの部分でインディーロックのようなメロディーを歌う。ブラックメタル風の歌い方が出てくるのは9曲のうち3曲。これまでのサウンドを継承しているのは「モンバサ」の後半だけだ。インスト曲の「ネプチューン・レイニング・ダイアモンズ」以外はメンバー全員がコーラスを入れる。ブラックメタルの面影は一部で残しているが、シューゲイズポップ、オルタナティブロックに移行したと言える。