HARRY STYLES

ハリー・スタイルズはイギリスのシンガー・ソングライター。ワン・ダイレクションの元メンバー。1994年生まれ。

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HARRY STYLES

2017年。アイドル的なグループであるワン・ダイレクションからソロデビューし、1994年生まれという若さを考えれば、意外なほど古風な曲調だ。どの曲も、60年代後半から70年代のロック、ポップスのジャンルを思い浮かべることができる。アルバムの前半はアコースティックギターを多用する。オープニング曲はサイケデリックフォーク、「サイン・オブ・ザ・タイムズ」はデヴィッド・ボウイ、「カロライナ」はニルソンとビートルズを掛け合わせたような曲。「オンリー・エンジェル」はエレクトリック・ライト・オーケストラの「ドント・レット・ミー・ダウン」をブルースロックバンドが演奏しているような曲。「キウイ」はマウンテンやグランド・ファンク・レイルロードのようなハードロック。アルバム全体として、安全志向に走った感は否めない上、この時代の歌詞としては何の問題意識も感じていない男女観は評価を下げる。

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FINE LINE

2019年。オープニング曲の「ゴールデン」はクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングのようなコーラスが付く。この曲に限らず、アルバム全体でコーラスが強化されている。「ウォーターメロン・シュガー」「アドア・ユー」は2000年代風のメロディーで、フォール・アウト・ボーイを思わせる。「トリート・ピープル・ウィズ・カインドネス」は70年代前半に出ていればヒットしそうな曲。「シー」はブルースロックを模倣。

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HARRY'S HOUSE

2022年。オープニング曲の「ミュージック・フォー・ア・スシ・レストラン」は70年代後半のファンクを思わせるが、2曲目以降はかつてのジャンルを強く想起させるということはなく、強いて言えばという程度の参照だ。そこに注目するよりも、一歩引いた視点で語られる歌詞がポップな曲に載せられて、ハリー・スタイルズの人間的成熟過程が記録されている点にポイントがあるだろう。その視点の位置を、現場ではなく象徴的な「家」に設定している。ハリー・スタイルズは、一般大衆とは異なる知名度と生活水準の中で生きているが、それをうかがわせる状況は描かれない。むしろ一般大衆と同じ生活をしているような単語を並べ、大衆との近さを強調している。「アズ・イット・ワズ」収録。