LIQUID TENSION EXPERIMENT/EXPLORERS CLUB

  • 90年代に出てきたプログレッシブ・ヘビーメタルのバンド。
  • ドリーム・シアターの成功で、世界中にプログレッシブ・ヘビーメタルのバンドが登場し、一時的なプロジェクトも多数結成された。
  • リキッド・テンション・エクスペリメントはドリーム・シアターのメンバーによるバンド。
  • エクスプローラーズ・クラブはマジェランのトレント・ガードナーによるバンド。

 
LIQUID TENSION EXPERIMENT/LIQUID TENSION EXPERIMENT

1998年。ギター、ドラム、キーボードはドリーム・シアターのメンバー、ベースはキング・クリムゾンのトニー・レヴィン。ドリーム・シアターと同じように、曲の展開やアンサンブルが聞かせどころだ。ボーカルはいないので全曲インスト。ボーカルがいてもいなくても安定した演奏で相当の評価を受けるアルバム。あれば何かの評価につながるとでも思っているのだろうが、とってつけたようなレゲエなど不要だ。

 
2/LIQUID TENSION EXPERIMENT

1999年。新たなジャンルを切り開くきっかけとなったようなアルバムを出したアーティストは、聞き手が「満足」よりもさらに上の「驚き」を欲するようになるため、なかなか好意的な評価を集めることはできない。ドリーム・シアターの場合、聞き手の注目点は、メンバーの持ちうる演奏技術ではなく、持ちうる演奏技術によって表現される音楽なので、その主要メンバーが聞き手の予想の範囲内に収まるようなサウンドを提示してきても新鮮味に欠ける。ギターがヘビーメタル寄りになったので、前半はハードロックとして聞けるが、後半は長いインスト曲という程度。演奏は安定している。

 
AGE OF IMPACT/EXPLORERS CLUB

1998年。アーティストが自分の作曲した曲をレコードとして録音しようとするとき、その時点で手の空いている演奏者を集めて曲を録音する手法を「ティン・パン・アレー・コンフェクショナリー」という。ティン・パン・アレーとは音楽出版社が集まる地区のことで、アメリカではニューヨーク西28番街、イギリスではロンドンのデンマーク街周辺を指す。その近辺では、音楽関係者や演奏家がすぐに調達できるので作曲家には都合がよかった。ロックン・ロールが1950年代に登場するまでは、ティン・パン・アレーがポピュラー・ミュージックの流行の発信地だった。ロックン・ロールが登場したあとも、手空きの演奏家をかき集めて即席で録音する手法は残っているが、そうした活動が、創作手法として認知されているのはイギリスだけで、アメリカではジャンルとして広まっていない。「ティン・パン・アレー・コンフェクショナリー」は、あくまでも創作活動の方法に注目しているので、このジャンルに入れられているアーティストがどういうサウンドの特徴を持つかは一概に言えないが、ハードロックではコージー・パウエルが入る。それ以外ではエジソン・ライトハウスやブラザーフッド・オブ・マン、ルーベッツ、パイロット、ミドル・オブ・ザ・ロードが入るので、いわゆるバブルガム・ポップが多い。こうしたグループは、中心人物はいるもののメンバーの結束や帰属意識が弱く、そもそも「メンバー」という呼び方がなじまない側面がある。90年中期以降のプログレッシブ・ハードロックやヨーロッパのロック・オペラのアルバムは、中心人物以外の演奏者が不定であることが多く、ハードロックの一個のジャンルとして扱った方が分類上都合がいいのではないか。このアルバムはマジェランのキーボード兼ボーカルのトレント・ガードナーを中心とするプロジェクトで、元フランク・ザッパ、UKのドラムのテリー・ボジオ、MR.BIGのベースのビリー・シーン、ドリーム・シアターのギターのジョン・ペトルーシ、イエスのギターのスティーブ・ハウ、ロイヤル・ハントのボーカルのD.C.クーパー、ドリーム・シアターのボーカルのジェイムズ・ラブリエが参加している。マジェランの曲を違うメンバーで録音したかのようなサウンドで、プロジェクトの意義が希薄だ。

 
RAISING THE MAMMOTH/EXPLORERS CLUB

2002年。前作から続いて参加しているのはテリー・ボジオ、ジェイムズ・ラブリエ、新たに参加したのはメガデスのギターのマーティー・フリードマン、カンサスのギター兼キーボードのケリー・リブグレン、カンサスのボーカルのスティーブ・ウォルシュ、ドリーム・シアターのベースのジョン・ミュング。ボーカルはスティーブ・ウォルシュが取ることが多く、カンサスを聞いているようだ。トレント・ガードナーは特にスティーブ・ウォルシュとケリー・リブグレンに強く参加を要請したと思われる。トレント・ガードナーとカンサスのサウンド傾向の共通点としてイエスが挙げられるが、イエスの「こわれもの」や「危機」を思わせるメロディーも確認できる。2曲目のインスト曲はマジェランそのもののサウンド。

 
MANIFESTO FOR FUTURISM/DALI’S DILEMMA

1999年。キーボードを含む5人組。この手のバンドにしてはボーカルが弱く、サウンドもドリーム・シアターに追随しているだけとの印象を免れない。比較されることが分かっていて、なおかつ比較対象に追いついていないことが明らかなのは評価が苦しい。プログレッシブ・ハードロックを専門とするマグナ・カルタレーベルから出ているが、同じような傾向のサウンドを次々と出していると飽きられる。