THE STRANGLERS

  • イギリスのパンクバンド。キーボード奏者を含む4人編成。他のパンクバンドよりも恐さがあった。
  • ボーカル兼ベースのジャン・ジャック・バーネル、ギターのヒュー・コーンウェルが中心。
  • ベースとキーボードがサウンドの中心となる珍しいパンクバンド。70年代はパンク、80年代はニューウェーブ、ニュー・ロマンティックスのサウンド。
  • 代表曲は「ノー・モア・ヒーローズ」「ピーチズ」「ゴールデン・ブラウン」。

1
STRANGLERS IV (RUTTUS NORVEGICUS)

1977年。邦題「夜獣の館」。ボーカルがギターを兼任、キーボードを含む4人編成。イギリスの3大パンク・バンドには入らないが5大パンク・バンドの中には入ることが多い。他のバンドと決定的に異なるところはキーボードが曲の主導権を握っていることである。したがってほとんどの人がドアーズとの相似点に言及するが、ドアーズほど歌詞に革新性はない。ギターよりもベースの方が目立つ。最後の曲は4部構成で8分ある。オープニング曲の「サムタイムズ」と「ハンギング・アラウンド」はキーボードのメロディーを使い回しており、「ノー・モア・ヒーローズ」でも使用される。「ピーチズ」「グリップ」収録。日本盤ボーナストラックの「ゴー・バディ・ゴー」はポップな曲調。

2
NO MORE HEROES

1977年。ベースが活躍し、前作よりも角が立ったサウンドになった。アルバムタイトル曲はパンク・ロックのファン全体に浸透した代表曲。「サムシング・ベター・チェンジ」収録。

3
BLACK AND WHITE

1978年。キーボードが活躍。シンセサイザーが多くなり、「ナイスン・スリージー」はエマーソン、レイク&パーマーのキース・エマーソン並みにシンセサイザーを弾き倒す。キーボードのメロディーも多彩になり、同じようなフレーズの使い回しは少なくなった。オープニング曲の「タンク」は戦車の大砲の音が入っている。「アウトサイド・トーキョー」は言及するほどの意味がある歌詞ではない。全体的にコーラスも増え、親しみやすい。日本盤ボーナストラックの「ウォーク・オン・バイ」はディオンヌ・ワーウィックのカバー。バート・バカラック作曲。

LIVE (X CERT)

1978年。ライブ盤。

4
THE RAVEN

1979年。70年代に活躍したプログレッシブ・ロックバンドが、パンクやディスコのブームを経て作ったような作風。ハードなロックにしようという意図は感じられず、ギターの音を小さくし、キーボードをディスコ風にしたサウンド。スピーディーな曲はない。クラッシュがレゲエやファンクを取り込んで黒人文化に寄っていこうとしたのとは逆に、ストラングラーズはポップな白人文化に寄ろうとしている。メンバー自身はそうした精神的な意味づけを認識せず、創作意欲の向くままに作っていると思われる。「ダッチェズ」「メニンブラック」収録。

5
(THE GOSPEL ACCORDING TO)THE MENINBLACK

1981年。邦題「メニンブラック」。サウンドがかなり変わり、エレクトロ・ポップになっている。ホットバターやバグルスにも似ているとさえ言える。ストラングラーズが演奏していると知らなければ、パンクのバンドだという認識はまず起こりえない。ボーカルもメロディーの抑揚が少ない。ギターとベースの地位が逆転し、ベースの音が大きい。

6
LA FOLIE

1981年。「メニンブラック」と「レイヴン」の中間にあり、両方の作風の曲がある。「トゥ・トゥ・タンゴ」はボーカル・ハーモニーを重ねてメロディーを作っており、これまでにはなかった曲のひとつ。「メニンブラック」の路線は最後の3曲なので、全体としてはロックに戻った印象がある。歌詞の内容は男女関係がほとんど。「ゴールデン・ブラウン」はバンド最高のヒット曲。

THE COLLECTION 1977-1982

1982年。ベスト盤。

7
FELINE

1982年。邦題「黒豹」。ヨーロッパ、イギリスを中心に流行していたニュー・ロマンティックス、ニューウェーブの雰囲気が強い。ロックというよりはポップスだ。歌詞もイギリスよりフランス、イタリア、ロシアといったヨーロッパ大陸に目が向いている。

8
AURAL SCULPTURE

1984年。前作の路線。サウンド自体は当時のイギリスのポップスの最先端であったと思われる。ホーン・セクション、女声ボーカルも使う。ギターが活躍する場所はほとんどない。最後の「マッド・ハッター」はドゥー・ワップ風コーラスが入る。日本盤ボーナストラックの「ホット・クラブ」は60年代のエレキ・サウンドに近い。「ウラジミール・ゴーズ・トゥ・ハヴァナ」はロシア民謡のカリンカを使用。「スキン・ディープ」収録。

9
DREAMTIME

1986年。邦題「夢現」。全体にエコーが深く、ボーカルもU2のように聞こえる。キーボードもこのころ流行したサウンドを多く使う。オーストラリアの先住民族、アボリジニの思想がテーマだという。

 
ALL LIVE AND ALL OF THE NIGHT

1988年。邦題「オール・ライヴ」。ライブ盤。「ナイスン・スリージー」ではホーン・セクションが入る。「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」はキンクスのカバー。この曲のみスタジオ録音。

10
10

1990年。再びサウンドが大きく変わり、60年代、70年代のようにポップでメロディアスだ。「メニンブラック」から「夢現」までのヨーロッパの雰囲気はない。オルガンとホーン・セクションを使用し、ギターもはっきりした輪郭を持っている。「96ティアーズ(96つぶの涙)」は?&ミステリアンズのカバー。クイーンで有名なロイ・トーマス・ベイカーがプロデュースしている。

 
GREATEST HITS 1977-1990

1990年。ベスト盤。未発表曲はない。

11
STRANGLERS IN THE NIGHT

1992年。ボーカル兼ギターのヒュー・コーンウェルが抜け、ボーカルとギターがそれぞれ専任で加入。5人編成。ボーカルは一般的なロックの声で、特徴を持たせた歌い方ではない。これまでのアルバムの中で、初めてアメリカに重点を置いた内容になっている。かつてに比べればポップなメロディーを保っているが、「10」のような60年代的な明るさは薄れている。

12
ABOUT TIME

1995年。パーカッションとストリングスを導入し、曲の半数は新しい音を入れている。ストリングスはクラシック四重奏団と同じ編成。ナイジェル・ケネディもボーカルで参加しており、クラシックの雰囲気を入れてみようという意図が感じられる。ストラングラーズが実際に取り入れているストリングスは、他のバンドの使い方に比べればごく一般的で、大仰なほどにクラシック寄りというわけではない。あくまでもストリングスを付け足しているだけだ。このアルバムから日本盤が出なくなった。海外盤にはファン向けの連絡先が6カ国語で書かれており、その中には日本語も含まれる。

13
WRITTEN IN RED

1997年。前作と同路線。ストリングスの音はキーボードで代用している。ボーカルにもう少し表現力がほしい。「サマー・イン・ザ・シティ」はラヴィン・スプーンフルのカバー。

FRIDAY THE THIRTEENTH LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL

1997年。ライブ盤。

14
COUP DE GRACE

1998年。曲ごとにコメントがついており、運命、特に紛争や戦争によって命やその他を失うことをテーマとしている。具体的な固有名詞はアルジェリア紛争とフォークランド紛争が出てくる。テーマが真面目なのでサウンドもそれに伴ってやや暗めだ。

5 LIVE 01

2001年。ライブ盤。

15
NORFOLK COAST

2004年。

16
SUITE XVI

2006年。

17
GIANTS

2012年。