THOM YORKE/ATOMS FOR PEACE

  • トム・ヨークは1990年代後半から2000年代にレディオヘッドのボーカル。
  • アトムス・フォー・ピースはトム・ヨークとレッド・ホット・チリ・ペッパーズのベースのフリー、プロデューサーのナイジェル・ゴドリッチを中心に結成したバンド。

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THE ERASER/THOM YORKE

2006年。レディオヘッドと同様にエレクトロニクスを使った緊張感のあるサウンドだが、ややバンドサウンドの要素が多い。「ブラック・スワン」はベースが核になる曲。「ハロウダウン・ヒル」はロックのリズム、ロックのベースに持続音のシンセサイザーが流れる。日本盤は歌詞対訳がフォークギタリストの中川五郎で、手書きの訳が載っている。

SPITTING FEATHERS/THOM YORKE

2006年。シングル盤のB面曲を集めたEP。5曲収録。「ハロウダウン・ヒル」についての解説が重要。日本のみ発売。

THE ERASER RMXS/THOM YORKE

2009年。「ジ・イレイザー」のリミックス盤。

AMOK/ATOMS FOR PEACE

2013年。レディオヘッドのボーカルのトム・ヨーク、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベースのフリー、レディオヘッドのプロデューサーのナイジェル・ゴドリッチを中心とし、ベック、R.E.M.のドラムのジョーイ・ワロンカー、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの「アイム・ウィズ・ユー」に参加したパーカッション奏者が加わる。ジョーイ・ワロンカーは60年代後半から70年代にワーナー・ブラザーズ・レコードを大きく発展させたレニー・ワロンカーの息子。トム・ヨークのソロではなくバンドとして録音しているので、レディオヘッドの前衛的なサウンドよりもバンドサウンドに近い。ドラムとパーカッションは電子音、エレクトロニクスによって代用できる音だが、ライブでは人がロックに近い音で再現するとみられる。ギターやベースなど、人を介在させている部分が多くなると必然的に冷たさが減る。

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TOMORROW'S MODERN BOXES/THOM YORKE

2015年。トム・ヨークがシンセサイザー、エレクトロニクス等の機材で、1人で録音。バンドサウンドではないので、異質な他者との相互作用に何かを期待するようなサウンドではない。内省的で不定型で、電子音のリズムだけがはっきりとした輪郭を持つ。メロディー、すなわち音階は高低も強弱も予測しにくい曲線を描き、揺れも多い。これをメロディーの揺らぎと言い表すならば、それは情緒の揺らぎと同じであり、精神状態の揺らぎだと言える。ボーカルも音響面ではメロディーと同種の揺らぎがある。歌われる詞そのものは意味内容や意識を抱えるため、情緒とは別物の理性として、異なる解釈ができるだろう。近年のレディオヘッドのアルバムとトム・ヨークのソロ作が似通うのは、同じ作曲者が関わっているのだから自然なことだが、このソロ作は専らトム・ヨークの内面を映し出していると言える。このサウンドをトム・ヨークが明確な意図を持って作っているとすれば、はっきりしない不安定な意識のありようを、誰にも干渉されずに作りたかったということだろう。

SUSPIRIA/THOM YORKE

2018年。映画のサウンドトラック盤。2枚組。「サスペリア」は有名なホラー映画。1975年に発表された「サスペリア・パート2」、77年の「サスペリア」はプログレッシブ・ロックバンドのゴブリンが音楽を担当し、ヒットしている。2018年の再制作でトム・ヨークが音楽を担当している。映画音楽という性質上、多くの曲がインスト曲で曲も短いが、トム・ヨークがもともと持っている前衛的な志向がホラー映画の緊張感と合っている。「ヴォルク」はマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」を思わせる。25曲のうち歌詞があるのは5曲。「ア・クワイア・オブ・ワン」は突出して長く、14分ある。