THE VELVET UNDERGROUND

  • サイケデリック、フラワームーブメント時代のアメリカのロックバンド。
  • ルー・リードを中心とする4人編成。ほとんどの曲をルー・リードが作る。
  • ルー・リードの文学的な歌詞と朗読調のボーカル、ベース兼ビオラ兼キーボードのジョン・ケイルの前衛性がロックの表現の幅を広げた。
  • デビュー盤のジャケットはアンディ・ウォーホルがデザインしている。
  • ルー・リードは1970年に脱退し、ソロで成功。2013年死去。

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THE VELVET UNDERGROUND&NICO

1967年。現代アートのアンディ・ウォーホルが制作に大きく関与したデビュー盤。ルー・リードは語るように歌う。ボブ・ディランを思わせるところは好意的に受け取られただろう。「僕は待ち人」「ラン・ラン・ラン」はリズムに60年代のロックンロールの影響がある。そのような曲でもギターにはサイケデリック・ロックの雰囲気があり、ザ・バーズの「霧の5次元」などと同時代性がある。「もう一度彼女が行くところ」はトロッグスのような曲。「宿命の女」「オール・トゥモローズ・パーティーズ」「ユア・ミラー」はニコがボーカルを取る。「毛皮のヴィーナス」「黒い天使の死の歌」はジョン・ケイルがビオラを弾く。ルー・リードの歌詞は主に麻薬と逸脱した性を描いており、その2つは秩序や慣習を動揺させる点で共通する。ルー・リードはこれを詩的、文学的に表現しており、芸術的逸脱が理解可能な学生にしか理解されなかった。「ヘロイン」収録。

2
WHITE LIGHT/WHITE HEAT

1968年。前作に参加したニコが参加せず、4人編成で録音。「ザ・ギフト」はルー・リードの詩をジョン・ケイルが朗読するように歌い、不協和音を含むギターが一定のリズムの上で自由に演奏される。17分ある「シスター・レイ」はその拡大版のような曲。A面は4曲、B面は2曲。B面はギター、オルガンが当時最もハードだったであろう演奏をしている。タイトル曲はルー・リードが単独で作曲した60年代調のポップなロック。

WHITE LIGHT/WHITE HEAT

1968年。ヨーロッパ盤のジャケット。

3
THE VELVET UNDERGROUND

1969年。邦題「ヴェルヴェット・アンダーグラウンドIII」。ベース兼オルガンのジョン・ケイルが抜け、ベース兼オルガンのダグ・ユールが加入。各楽器が制御され、従来のポップスの形態を踏襲した。9分近くある「殺人ミステリー」は全員がボーカルを取り、前作の「ザ・ギフト」の路線に近いが、これ以外の曲は60年代後半のソフトロックのような曲。他のアーティストとはルー・リードの歌詞が唯一の相違点となっている。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはビートルズやボブ・ディランなど有名アーティストと同じように、ポピュラー音楽の歴史的に重要なアルバムと音楽的に評価の高いアルバムが異なる。このアルバムは音楽的評価の高いアルバムで、ポピュラー音楽の表現の拡張という意味では「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ」や「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」に及ばない。

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LOADED

1970年。前作からさらに聞きやすくなり、ダグ・ユールがボーカルを取る曲はメロディアスだ。ルー・リードが独自性を発揮するのは「スウィート・ジェーン」「ニュー・エイジ」はリズム&ブルースに近いサウンド。ルー・リードが歌う「ロックン・ロール」「ヘッド・ヘルド・ハイ」「オー・スウィート・ナッシン」は朗読調のボーカルながらリズム感をつけ、曲に合わせようと歌っているのが分かる。「アイ・ファウンド・ア・リーズン」はソフトロックのようなコーラス。前作までシンバル、ハイハットをほとんど使わなかったドラムが、このアルバムでは演奏していないため代役が演奏しており、シンバルを使う一般的なドラム演奏となっている。このことも、サウンドの一般化、匿名化の要因となっている。

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SQUEEZE

1973年。ルー・リードが抜け、ギター、ドラムも参加せず、ダグ・ユールがほとんど1人で作曲、録音したアルバム。ドラムはディープ・パープルのイアン・ペイス。

1969 VELVET UNDERGROUND LIVE

1974年。ライブ盤ではなくライブ録音集。複数の公演から選曲し、録音状態は曲によって異なっている。当時のライブを再現しているわけではなく、ライブとしての演奏を、記録として残している。「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」でジョン・ケイルが歌っている「ザ・ギフト」は収録していないので、ボーカルは全てルー・リードがとる。「シスター・レイ」も入っていないので、バンドとしての総合的な演奏力よりも、もっぱらルー・リードのボーカルに焦点が当てられている。スタジオ盤とは歌詞が異なる曲があり、「ヘロイン」はCD化での追加収録を含めて2曲ある。一般的なライブ盤とは趣旨が異なることをあらかじめ理解しておいた方がよい。

7
VU

1984年。未発表曲集。「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」から「ローデッド」の間に録音した未発表曲を2回に分けて発売したうちの1枚目。1968年に録音された2曲はジョン・ケイルが参加、1969年録音の8曲はダグ・ユールが参加している。10曲のうち6曲は、70年代にルー・リードのソロアルバムに収録されており、その原型がヴェルヴェット・アンダーグラウンドの演奏によって聞けることになる。ジョン・ケイルが参加した曲はそれほど前衛的ではないため、この企画盤全体が「ヴェルヴェット・アンダーグラウンドIII」に近いサウンドになっている。

8
ANOTHER VU

1986年。「VU」に続く未発表曲集。1967年の「ゲス・アイム・フォーリング・イン・ラヴ(インストゥルメンタル・ヴァージョン)」と1968年の「ヘイ・ミスター・レイン(ヴァージョン1)」「ヘイ・ミスター・レイン(ヴァージョン2)」はジョン・ケイルが参加。「ヘイ・ミスター・レイン」は両方ともビオラを弾いている。9曲のうちインスト曲が3曲あるが、ギターが終始リズムを刻んでいるので、ボーカルを入れる前の曲かもしれない。日本盤は1988年に発売。